この記事はイギリスで最も有名なロングトレイル、Coast to Coast (略称C2C)を歩いた記録です。
海外のロングトレイルも旅の選択肢の一つになればいいなと思い記事にしました。
イギリスのロングトレイル “Coast to Coast” って?
距離:293km
必要な日数:12日~16日
歩いた日:2019/06/07~06/20(計14日うち2日休み)
通過する国立公園:Lake District National Park, Yorkshire Dales National Park, North York Moors National Park
イギリスにはフットパス(歩くことを楽しむ道)が縦横無尽に存在します。公共の散歩道で、川や丘はもちろん、農場や自宅の敷地内を通る道もあります。
C2Cはイギリスの公式のフットパスではなく、1973年にAlfred Wainwright という人が独自にルートを設定したのが始まりです。
自分でトレイルを作ってしまおうというDIY精神たっぷりのこのトレイルは、見所もたくさん、それでいてきつい急斜面もなく、トレイルの見本のようなルートです。
イギリスで最も有名なトレイルという文言にも頷けます。
海から海へ続く道を歩いていく、それだけでロマンたっぷり
AlfredWainwrightの像 歩き好きな彼に勝手に親近感
アメリカとも他のヨーロッパ諸国とも異なる、イギリスならではの文化と景色
イギリスの内部には網目のようにフットパスが張り巡らされています。そして、ただ道が存在するだけではなく、子どもから老人まで、本当に気軽に歩いているのです。アメリカ人や日本人にとっては、ハイキングや散歩は休日の特別なイベントですが、イギリス人にとって散歩は生活の一部になっています。それはとても心地が良いものでした。
散歩を愛するイギリス人が作ったため、どのトレイルの質もとても高いです。簡単なアプローチでハラハラする山岳地帯に行けたり、足腰に負担がかからないルート設定になっていたり。フットパスはイギリスならではの文化でした。
また、イギリスは雨ばかりの国です。緯度も高いため、日本より寒い。そのため日本とはまた違った景色が楽しめます。山岳地帯の標高はそれほどではありませんが、驚くほど険しい山容を見ることができます。
子どもたちから老人まで気軽に歩いている
レイクディスクリクト(湖水地方)に入るとすぐに山岳風景が広がる。標高は1000M前後だが、山なみは険しい。
苔むした石の壁。湿潤なイギリスならでは。
豊富な雨が多様な植物を生み出す
トレイル後半は穏やかな農地が広がる
C2Cのトレイル事情
C2Cのトレイルは、前半は山岳地帯、後半は農地を歩きます。3つの国立公園を通るだけあって眺めも歩きやすさも格別です。山岳景色あり、農村地帯あり、海あり、ぬかるみありと、盛り沢山なトレイルです。短期間でいろいろなトレイルを味わうことができるので、得した気分になります。砂漠も見通しの悪い森もないので退屈になることも少ないです。
だいたい1日のセクションごとに人里に降りることができます。そこでビールを飲んだりシャワーを浴びたり、宿に泊まってイギリスの文化を感じることもできます。
お金のない人は街中でキャンプもでき、資金に余裕がある人は毎日宿に泊まって歩くことができます。老若男女、体力に合わせて歩くことができるトレイルです。
スタート地点は海から。二週間後の対岸の海に向けて出発する
木々のトンネルをくぐり、柵を越えてゆく
畑の中を突っ切る もちろん足元はドロドロ
牧草地の中を歩く 至るところに羊が
とにかく雨が多い
雨が多いと聞いていたイギリスでしたが、本当に雨が多かったです。じっくり1日降るのではなく、降ったりやんだりを繰り返して徐々に精神的に参っていきます。
スペインのトレイルを歩いた装備のままでイギリスにきたため、レインケープとハーフレインパンツという格好でしたが、一瞬でビショビショになり凍えました。街のアウトドアショップで安いレインウェアを購入しましたが、イギリスのトレイルを歩く際は高性能なレインウェアをおすすめします。
驚くほど約に立たないレインケープとレインハーフパンツ
つかの間の晴れ間にホッと一息
キャンプ地についたらすぐにすべてを乾かす
イギリスの文化を楽しむ
ヨーロッパ諸国にはない、イギリス独自の文化が楽しめます。
フットパスの文化はもちろん、庭造りへの愛を目の当たりにしました。
他のヨーロッパ諸国とは違うんだぞ、という特別な意思のようなものを感じました。
出会った人の人柄は概して大人しく繊細。パーソナルスペースに気を使っていて大変居心地が良かったのを覚えています。
石造りの山小屋
執拗なこだわりを見せるイギリス人宅の庭 競い合うように庭をいじっている
テント泊への理解が素晴らしい
1日の終りに到着する街では、必ずテントをはる場所があります。それも大きなキャンプ場ではなく、街の宿屋が庭を開放しています。テントで寝るなんて信じられないと拒否される国もありますが、イギリスはテント泊やアドベンチャーにとても理解があります。
庭もきれいに整備されていて、オーナーの飼い犬や猫と一緒に寝るのも良いものです。
キャンプ場というよりも個人宿の庭を借りる感じ
キャンプへの理解が溢れているイギリス
キャンプ場だがキャンピングバンに泊まっていいとも言われ、迷わずバンを選択
木の下で平らで眺めが良くてトイレが近くて清潔なほぼ完璧なキャンプ場
ナビゲーション
整備はされていますが、一部地図読みが必要でした。さまざまなフットパスが入り乱れているため道に迷う可能性もあります。
公式のガイドマップを持ち歩きましたが地図としては使用せず、宿やレストラン情報を得るのに使いました。
他のハイカー達は首から地図をぶら下げて、地図読みのオリエンテーリングを楽しんでいたようです。所々にC2Cの標識はありますが、他のフットパスと入り乱れているので、地図は必須です。
ロングトレイルでは必須のアプリGUTHOOK GUIDESにC2Cの地図あったため、一度も迷わずゴールまで辿り着くことができました。このアプリを使って歩いている人も数人いたようで、ネットワークで共有されているリアルタイムのコメントを楽しみながら歩きました。
至るところにフットパスの看板
C2Cの看板はたまにある
GUTHOOK GUIDESで他のハイカーのコメントを見るのも楽しい
食事について
イギリスは食事があまり良くないというのは有名な話です。しかし2週間程度の旅でしたので、特に飽きもせず、美味しい食事にありつけました。
キャンプ場を運営しているオーナーが宿の夕食を作っていることが多々あり、都会のレストランでは味わえないホームメイドの料理にありつけるのは、田舎道を歩くロングトレイルならではです。
どこのレストランでもグリンピースとポテトが出る
ポンプ式で汲み上げる生ビールは、ぬるいがうまい
トレイルマジック
イギリスのトレイルにもトレイルマジックは存在します。地元の人達がハイカーを応援するのはアメリカのようです。このトレイルに長い歴史があり、地元住民にとっても愛される存在であることが見てわかります。
有料なので遠慮なく頂ける
地元の人がハイカーを応援する文化はアメリカのようだ
協会の中で一休み 雨の日には屋根のある場所が本当にうれしい
老若男女に愛される、バラエティに富んだトレイル
もし2~3週間程度休みができたなら、間違いなくイギリスのC2Cを歩きに行きます。
それほど面白く、よく整備されている素晴らしいトレイルです。
自分のレベルに合わせて旅のスタイルを変えられるようにできているので、海外のロングトレイルが初めての方に是非オススメしたいトレイルです。
おまけ:イギリスの観光名所
C2Cは、「ピーターラビット」の舞台である湖水地方を通過します。ピーターラビット好きにはたまらないでしょう。
私はハリーポッターの大ファンなので、C2C上にあるグロスモント駅には興奮しました。これは映画でホグズミード駅のロケ地になったところです。ロンドンにも9と4分の3番線駅があったり、公式ショップがあったりと、それだけでも満足できる旅でした。