この記事はヨーロッパの代表的なロングトレイル、カミーノ・デ・サンティアゴについて紹介しています。
海外のロングトレイルにチャレンジしてみたい方や、トレイルの実情を知りたい方に読んでもらえればと思います。
サンティアゴ巡礼とは?
全ての道がサンティアゴへと続く
サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す道
「カミーノ・デ・サンティアゴ」とは「サンティアゴを目指す道」という意味です。
「カミーノ」とは「道」のことで、サンティアゴはスペインの地名「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」のことです。
長いので一般的には「カミーノ」と呼ばれています。
サンティアゴ・デ・コンポステーラは、キリスト教三大巡礼地のひとつ。ここに聖ヤコブの遺骸が祀られる大聖堂があり、ヨーロッパ各地から巡礼者が訪れます。
スペインやフランス、ポルトガルには、サンティアゴへと続く道がたくさんあり、最も有名な「フランス人の道」は、道自体が世界遺産に登録されています。
巡礼の道
日本のお遍路や熊野古道のように、カミーノは巡礼の道です。
巡礼者はキリスト教徒が多いですが、近頃はアクティビティやスポーツの一環として、転職や退職を機に歩く人が増えているようです。
ホタテ貝がカミーノのシンボル
巡礼証明書をもらいにオフィスに群がる巡礼者
カミーノのトレイル事情
クラシカルなザックを背負って歩く人も多い
シングルトラックは少なめ
古くから巡礼者が歩くカミーノは、日本の登山道やアメリカのトレイルとは趣が異なります。
シングルトラック(人ひとりが通れる幅の道)は少なめで、巡礼者が横並びになって話しながら歩ける道が多いです。
生活道や簡単なハイキングルートを歩くため、トレイルマニアにとってはやや物足りなさを感じます。しかし、「街並みや文化を楽しむ道」と捉えると、孤独な山歩きにはない面白さがあります。
日本のトレイルでいうと舗装路の少ない遍路道といったところです。
なだらかな農道が続く
車道の脇を歩く、たまに巡礼っぽいオブジェがあるので飽きない
自転車も通れる広い道を歩く、ハイシーズンは巡礼者であふれる
文化を楽しむ
バルでゲームに興じるスペインの老人
カミーノは、日本の登山道のように岩場でハラハラしたり、高所でドキドキしながら歩く場面はありません。
トレイル自体に面白さはあまりありませんが、ヨーロッパの文明や巡礼の文化を味わうことがカミーノの醍醐味です。
呪文のような巡礼専用用語(クレデンシャルやアルベルゲ、ブエンカミーノ、ペリグリーノ、オスピタレロ)を流暢に使えるようになると、まるで自分が中世の巡礼者になったかのような気分を味わえます。
ここでは、カミーノの楽しみである文化を紹介していきます。
巡礼者をもてなす様々な取り組み
アルベルゲを楽しむ
巡礼者には専用の簡易宿泊施設(アルベルゲ)が用意されています。
一日ごとにアルベルゲを移動して歩くので、「ここのアルベルゲはきれいだが食事がマズい」「あそこはシャワーのお湯がでない」など、単調な生活の楽しみになります。
食事の前にお祈りをして歌を歌ったり、ワインを飲みながら他の巡礼者と話したりと、なにかと楽しいのがアルベルゲです。
アルベルゲには公営のものと私営のものがあります。
公営のものは1泊1000円前後で泊まることができますが、合宿所のような雰囲気です。私営のものは1泊2500円前後ですが、近代的なドミトリーのように居心地のいいところが多いです。
その日の疲れ具合によって、宿を選べるのも大きな魅力です。
個人経営の宿は値段が高いが居心地はいい
教会を味わう
カミーノの面白さのひとつは教会めぐりです。
大きな街の大聖堂は荘厳で、建物の作りに圧倒されます。
小さな街の教会は可愛らしく、地元の人が集うミサに顔を出すこともできます。
スペインの教会は開放していないことが多いため、教会目当てで行くのならフランスを歩く道をおすすめします。
ミサに参加できることもある
ひとつひとつのものが精工で美しく、圧倒される
トレイル上にも十字架がある
バルで飲みまくる
スペインでの楽しみというと、バル(フラッと立ち寄れる小料理居酒屋)を思い浮かべる方も多いと思います。
もちろんカミーノ沿いにもバルがたくさんあります。
歩きの休憩にかこつけて、バルでビールを一杯、二杯と飲んだ後に、また歩くと最高に気持ちがよくなります。
つまみにはピンチョスやオリーブ、タパスの小皿を低価格で少しだけ楽しむことができます。
トレイル中の休憩にバルで一杯、宿についてシャワーを浴びたら街のバルで一杯、これが正しい巡礼者の姿です。
暑い中でこんな看板を見かけたら、足が勝手に動いていく
街並みを楽しむ
カミーノは街から街へと移動する旅です。
バルと宿が一軒ずつしかない辺鄙な田舎もあれば、ショッピングモールのある巨大都市を通ることもあります。
田舎町ではオリーブ畑や農業の様子を見たり、現地の人々のバルでの振る舞いを眺めているだけで楽しいです。
都会では、朝早くから始まる市場や雑貨屋などを廻っていると、あっという間に1日が経ってしまいます。
現地の人々にとってみても巡礼者はさほど特別な存在ではないようです。むしろ貴重な収入源なので、快く接してくれます。
市場で買い物すると異国情緒に浸れる
日本ではあまり見かけない農機具を見るのも楽しい
ビショビショになった羊
ナビゲーション
ホタテ貝のマークが至るところにある
地図アプリはそこまで普及していない
カミーノにおけるナビゲーションはとても簡単です。
どんな人でも歩けるように分岐や曲がり角などに、黄色の矢印があります。この黄色の矢印を辿っていけば誰でもサンティアゴに到達することができます。
ルート場の矢印が充実しているため、スマートフォンの地図アプリはそこまで発達していないようです。有名な「フランス人の道」以外の道はガイドブックを見ながら歩くことになります。
地図を解読しながら歩くのが楽しい
ガイドブックにはルートだけではなく、教会の歴史や宿の比較、バルの場所まで詳しく載っています。
カミーノの文化を味わい尽くすにはガイドブックは必須です。
ガイドブックになんでも書いてあるので安心
フランスでの巡礼のマーク
テント泊について
教会の前の空き地でテント泊
テント泊には向かない
今まで2回カミーノを訪れて、どちらもテントを持参しました。
しかし、カミーノには宿がたくさんあるため、テントを持ち歩くメリットはあまりありません。
むしろ張る場所がほとんどないため持ち歩くだけ無駄になってしまうことの方が多いです。
熱心に探せばテントを張れる場所は見つかります。しかしカミーノ上ではテント泊を奨励する文化があまりないので、こっそり張ることになります。
雨も多いので、よほどのテント好きでなければ無理して持ち歩く必要はありません。
雨の日はこっそり軒下を使う
食事・水について
ちょうどいいところに給水ポイントがある
水に困ることはあまりない
水に関しては補給ポイントがルート上にたくさんあります。
地球の歩き方などには水道水は飲めないと書いてありますが、私は飲んでいました。
水道水さえ飲むのに慣れてしまえば、水場に困ることはありません。
食事はバルが楽
食事はバルで取るのが簡単です。田舎町であれば値段もそこまで高くありません。
節約や、バルがルート上にない場合はフランスパンとサラミ、チーズを持ち歩きます。さすがの本場なので、安いものでも味はそこそこ。ペットボトルに赤ワインを入れて持ち歩けば、立派な食事にありつくことができます。
水道水は飲まないほうがいいと言われているが、飲んでも問題なし
肉を量り売りで買えるようになったら巡礼上級者
ルートの紹介は後編に続く
後編では、私が実際に歩いたルート
- ルピュイの道
- フランス人の道の一部
- 北の道
- プリミティボの道
- 銀の道
- フィニステラの道
について紹介していきます。
以下のリンクからご覧ください。