前編は以下のリンクをご覧ください。
この記事は昨今のウルトラライトギアに使われている生地についての説明と、実際の使用感を紹介した記事です。
- XPAC
- 超高分子量ポリエチレン繊維を織り込んだ生地
- シルナイロン/シルポリ
- ダイニーマコンポジットファブリック(キューベンファイバー)
- タイベック
について順に紹介していきます。
1、XPAC
XPACとは
アメリカのdimension-polyant社が開発したヨット用の生地です。表地と裏地の間に、X状の補強紐を組み合わせた素材です。
XPACの特徴
軽量なのにとても軽く、張りがありゴワゴワしています。
XPACの主な種類
VX07 : 柔らかい生地感が特徴で、財布や小物入れなどに使われる
VX21 : 固くてゴワゴワする生地、バックパックの底や強度が必要な場所に使われる
XPACの使用感
固くて自立する
この生地の特徴は、軽量なのに固く、伸びないことです。そのためバックパックに使われる事が多く、ザックの入り口にこの生地が使われていると、生地が立つので荷物をとてもいれやすい。
逆に固いので、体に直接触れる部分にこの生地を使うのはあまり向きません。固さがあるので、シワが若干出ます。
汚れやすい
生地の表面はザラザラしているため、泥汚れが着きやすいです。また表面に入った汚れは洗ってもなかなか落ちません。
耐久性は高い
半年間のロングトレイルに使いましたが、穴が空いた箇所は一箇所のみ。Xの紐が飛び出てくる部分もありましたが、実際の使用に不具合はありませんでした。熱湯での洗濯も頻繁に行っていましたが、裏地のコーティングが剥離することはなかったので、メンテナンス性も高いです。
生地の仕入れ値が高く、商品の値段も高価になってしまうのが残念です。
2、超高分子量ポリエチレン繊維を織り込んだ生地
超高分子量ポリエチレン繊維を織り込んだ生地とは
ハネウェル社が開発したSpectraFiberと、DSM社が開発したダイニーマファイバーがありますが見た目は一緒です。写真の白く格子状に張り巡らされているものが超高分子量ポリエチレン繊維です。この繊維がとても強靭で、耐摩耗性に優れています。
超高分子量ポリエチレン繊維を織り込んだ生地の特徴
さわり心地がしなやかでとても強靭です。
超高分子量ポリエチレン繊維を織り込んだ生地の使用感
しなやかな使い心地
XPACに比べてかなりしなやかな素材で、体にフィットします。バックパックのロールトップの部分など、折り曲げる場所にピッタリです。柔らかいので自立はしませんが中の荷物に合わせて形を柔軟にかえてくれます。
汚れにくい
裏も表も汚れがつきにくく、水もよくはじきます。
耐久性はかなり高い
40日ほどのロングトレイルで連続使用してみましたが、穴が空いた箇所はありませんでした。かなり耐久性が高く、乱暴に扱っても大丈夫です。裁断をする際も他の生地とは一線を画す切りにくさで、耐久性の高さが伺えます。
個人的にはXPACよりも、耐久性、扱いやすさの面でおすすめです。
3、シルナイロン/シルポリ
シルナイロン/シルポリとは
リップストップのナイロン/ポリエステル生地の両面に、シリコンコーティングを施した生地です。高い防水性と、つるつるしたさわり心地をもちます。
シルナイロンとシルポリの違いとは
見た目ではほとんど判別することができません。素材の特徴からナイロンの方が高耐久、シルポリの方が紫外線に強いことは確かです。確かな違いはわかりませんが、おそらく雨に濡れた際に、ポリエステルのほうが吸水しないため伸びにくいと思います。
シルナイロン/シルポリの特徴
非常に薄く透け感があります。にもかかわらず強度があるため、タープやテントのフライシート、スタッフサックなどによく使われます。
シルナイロン/シルポリの使用感
発色がよく透け感がいい
絶妙な透け感が持ち味で、中のものがうっすら見える生地は美しさもあります。またカラー展開も豊富で、発色が良いです。カサカサとした音もしないため、バックパック内の小分けの袋にちょうどいい生地です。
洗濯機で洗える、高いメンテナンス性
この生地のいいところは表面がつるつるしているために汚れがつきにくいこと、汚れがついたとしても洗濯機で洗えることです。30Dに関して言えばシリコンコーティングは一気に剥がれるのではなく徐々になくなっていくため、ポロポロ剥がれて手がベトベトになるようなことがありません。
耐久性はまずまず
半年間のロングトレイルに30Dのシルナイロンを使った食料袋とタープを持ち運びました。どちらも細かい穴は空きましたが、致命的なダメージはありませんでした。尖ったものにさえ気をつけていれば穴が空くことはありません。
4、ダイニーマコンポジットファブリック(キューベンファイバー)
ダイニーマコンポジットファブリック(DCF)とは
通称キューベンファイバーと呼ばれ、DSM社が開発した、ダイニーマ繊維を紫外線硬化樹脂でラミネート加工した極薄のフィルム状の生地です。
DCFの特徴
水をほとんど含まないため防水性が高い生地です。薄くて透けるような生地感で、使うほどにシワが生まれ独特な雰囲気がでます。
DCFの使用感
二人用のテントで500g弱と超軽量 ただし値段が猛烈に高い
独特な透け感のある素材
高い防水性
この生地の使うメリットは、保水しないために高い防水性を持つ点です。そのためタープやテントに使われています。
ただ、日本のような湿潤な環境で使うと、透湿性がないため結露がすごいです。風が通る場所や乾いた土地では最適です。
耐久性は疑問
一ヶ月程この生地のテントを連続使用しました。かなり高価なため取り扱いには充分注意し、グランドシートも敷いていましたが、床に穴が空きました。生地の耐水性があるため、空いた穴から水が入り、水たまりになります。
半年ほどスタッフサックも使用しましたが、表面は穴があき縫い目から裂けます。縫わずにボンドで貼り付けた商品もありますが、ボンド自体の効き目は長くはなさそうです。
驚くほど高価
確かにかなり質量は軽く薄いですが、値段は超高価です。値段と耐久性、質量のバランスを考えたら、商品に採用する気にはなれません。
5、タイベック
タイベックとは
デュポン社が開発した高密度ポリエチレン不織布です。
不織布とは
シート状の繊維集合体を絡ませて、編織することなく製造する布です。基本原理は「紙」に近いです。防水、透湿性に優れ、低コストで製造可能なため、防護服や建築資材として使われています。
タイベックの特徴
紙の様な素材で、光にかざすと中の繊維が透けて見えます。ソフトタイベックとハードタイベックがあり、ソフトタイベックはシュラフカバー等に使われ、ハードタイベックはグランドシート等に使われます。独特な質感のためアパレルブランドがジャケットなどに使うこともあります。
タイベックの使用感
グランドシートとして使う 汚れやすく浸水しやすいが、安い
透湿性
水をある程度防ぐ耐水性を持ち合わせながら、透湿性があるため、シュラフカバーに丁度いいです。服として使うにはかなり蒸れるため向きません。
安価
かなり安いため気兼ねなく使うことができます。縫い物の練習にもぴったりです。
生地端がほつれない
タイベックは不織布なので生地端がほつれません。グランドシートを好みのサイズに切り出す場合も、切りっぱなしで大丈夫です。
耐久性はあまりないが安いので我慢できる
実際に半年間のロングトレイルでグランドシートとして持ち歩きました。穴はたくさんあき、しわしわになり、かなり縮みましたが、安いので我慢できます。消耗品として考えるのならばかなりお得な生地です。
最適な生地の製品を選ぶ
一つの製品でも、さまざまな条件から最適な生地を選んでいます。
しかし商品によっては、生地の特徴と製品の用途がマッチしていないものが販売されていることもあります。値段や耐久性のバランスをうまく見極めることが大切です。
また、生地のブランドによって値段が跳ね上がっていることもあります。
本当に高価な生地が必要な商品なのか、軽く過ぎてすぐ壊れてしまう商品ではないか。
生地の情報をしっかり確認する必要があります。
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