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ULギアに使われる軽量生地の比較 基礎編

この記事は、現在よく使われているアウトドア用の生地についてをまとめたものです。

インターネットで気軽にアウトドア用品を購入できるようになり、実際に届いてから質感を確認することが多くなりました。

手にとって見ると「思っていたよりもペラペラだった」とか「こんなに光沢があるとは思わなかった」となる場合が増えていると感じます。また、「一回使っただけで破れた」「久しぶりに使ったら裏面がポロポロと剥がれている」といったこともあるかと思います。それらはすべて、生地に関する知識を身につければ回避できます。

よくテントの素材の表記では

【本体:15デニールポリエステル】

【フロア:30デニール・ナイロン・リップストップ(ウレタン・コーティング)】

のような暗号が並んでいます。この記事ではまず最初に表記の見方を解説します。次回の記事では、最近のウルトラライトギアによく使われている生地について紹介します。

以上を通して、「これはあの製品と同じくらいの厚さかな」「この生地はあんまり負荷をかけたらまずそうだ」というように、なんとなく生地の情報がわかるようになることが目標です。

透けるほど薄い生地から、ストレッチする生地まで様々

普通の生地とどう違うの?

アウトドア用と普通用(通勤用の帆布のバッグなど)の生地の違いは主に下の3つになります。

耐久性

アウトドア用の生地は、直接地面に置いたり岩や固い草木、体と接触する機会が多いため、一般的な生地に比べて耐久性があります。登山の行動中にバックパックの底が破れてしまったら行動することもままなりません。命を守る道具として一定の耐久性が確保されています。

軽さ

分厚くて丈夫であればいいとうわけではありません。丈夫なだけではなく、持ち運びや移動がスムーズに行えるように、軽さも大切です。一般的に重いものは耐久性が高く、軽いものは耐久性が低いのですが、このバランスがアウトドア用生地では極めて重要です。

乾きやすさ、耐水性

一度濡れてしまったらなかなか乾かないものは登山には向きません。乾かないものを身に着けていると体が冷えてしまったり、荷物が水分を含んで重くなってしまいます。

耐水性のある生地もあります。レインウェアやテント用の生地は水を弾き、体をドライに保つのに一役買っています。

透けるほど薄い生地から、ストレッチする生地まで様々

ナイロンとポリエステルの違い

登山では、綿を使ったものは避けて、化学繊維のものを使ったほうがいいということは一度は耳にしたことがあると思います。それは化学繊維が綿に比べて、水を含みにくい性質を持っているため汗が乾きやすいからです。

では、登山用品によく使わている化学繊維の「ナイロン」と「ポリエステル」にはどういった違いがあるのでしょうか。

ナイロン生地
ポリエステル生地

見た目では違いはわからない

上の生地を見比べればわかりますが、ナイロンとポリエステルは見た目で判別することはできません。手っ取り早く判別するには、生地にライターを近づけます。ナイロンは燃えにくく、ポリエステルは黒煙と特有の匂いが発生します。

ナイロンとポリエステルの違い

見た目はほとんど一緒なのに、ナイロンとポリエステルを使い分けるのはどうしてでしょうか。

答えは紫外線劣化耐久性にあります。

紫外線劣化

ナイロンは紫外線による劣化があり、ポリエステルには紫外線への耐性があります。劣化すると、生地の強度が落ちてしまいます。

例えば、基本的には夜だけしか使わない山岳用テントはナイロンでできています。一方、昼間に使うことが多いキャンプやツーリング用のテントの場合、ポリエステルを使うことが一般的です。ポリエステルの場合日光による変色や劣化がありません。

耐久性

強度は、ナイロンのほうが若干強いですが違いはほとんどありません。大きな違いは耐久性にあります。

ポリエステル素材は繰り返しによる摩擦に対して弱く、ナイロンは摩耗に対して非常に優れています。そのためエアバッグや漁網など「ナイロンでなくてはならない」用途があるのがナイロンの大きな特徴です。

この様な生地の特性によって、テントの床の部分はナイロン、フライシートはポリエステルといった違いが生まれます。

リップストップって?

リップストップとは

写真のように、薄い布に太い補強糸が格子状に編み込まれていることを指します。布の強さを高める方法の一つです。

リップストップ構造にすることによるメリット

太い補強糸が一定間隔で編み込まれることによって、万一布が破れてしまった場合に、それ以上の引き裂きを防いでくれます。軽くて強い織物が求められる登山用品にはピッタリの構造です。

PUコーティングってなんだ?

PUとは

PUはポリウレタンのことでゴムのような弾性のある素材です。この素材を生地の裏側に吹き付けた膜を、ポリウレタンコーティングと呼びます。

一般的な生地は、縦糸と横糸が組み合わされた織物なので微細な隙間があります。

その隙間を埋めるためにPUコーティングをすることによって、撥水性や耐水性を得ることができます。

経年劣化

コーティングにより撥水性や耐水性をもたらしてくれますが、日光や酸化性ガスによって劣化してしまいます。

使わなくなったバックパックを久しぶりに取り出してみると、内側のコーティングがポロポロと剥がれていることがありますが、それはポリウレタンの劣化によるものです。

だいたい5年もするとPUコーティングは剥がれ落ちてしまうので注意が必要です。

生地の厚さを示す表記

デニール(D)

糸や繊維の太さを表す単位のことで、「デニール」の表記で生地の厚さがわかります。

正確には「糸の長さが9000mで1gの時に1デニール」ですが、数字が小さいほど薄い、大きいほど厚いと覚えていれば大丈夫です。詳しい人は「〇〇デニール」とは呼ばず「〇〇デー」と省略して呼びます。

用途

登山用品に使われているもので、最も薄い生地は7D~15D 。

分厚い昔の登山用ザックは1000Dくらいです。

ウルトラライト系の登山ザックは70D~210D、一般の登山ザックは400Dのものがよく使われているようです。

〇〇デニールの表記を知っていると、だいたいの生地の厚さがわかります。

ダイニーマ コーデュラ

CORDURAやDyneemaといったタグが生地に挟み込んであるのを見たことがある方も多いと思います。これらは一体何なのでしょうか。

CORDURAやDyneemaは生地のブランド名

コーデュラやダイニーマは生地のブランドの商標です。それぞれインビスタ社、東洋紡が取得している商標で他社がこのタグを使うには条件があります。安定した強度をもつ生地の目安と考えればいいでしょう。

ちなみに「ナイロン」もデュポン社の商品名でしたが、今では一般的な慣用語として使用されています。

現在主に使われているUL生地

現在ウルトラライトギアによく使用される生地は主に5つです。

  • XPAC
  • Spectra
  • シルナイロン/シルポリ
  • ダイニーマコンポジットファブリック(通称キューベンファイバー)
  • タイベック

次回の記事で生地の説明と、実際の使用感を紹介します。

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