登山が趣味の方でも、冬の間はお休みという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
冬の山も歩いてみたいけど、
「冬山はお金がかかる」
「冬山は山岳会で講習を受けなければならない」
「危険だから1人で出かけてはならない」
など、冬山を始めるにあたって尻込みするような文句がたくさんあります。
冬山の山頂を目指す場合は確かにその通りです。しかし、ゆったりとした散歩程度でしたらその限りではありません。
山の麓の山林を歩くだけなら、高価な装備も、講習も特に必要ありません。
夏の山とは表情が異なる、静寂の山歩きを楽しんでみませんか。
アルパインを楽しむならばしっかりとした装備が必要
黒姫山を眺めながら雪の中をのんびり歩く
スノーハイキングの面白さ
道なき道を歩く
スノーハイキングの面白さはなんと言っても
雪があればどこにだって行けるという点です。
夏のあいだは藪が生い茂って歩けない場所も、登山道がない場所も、池の上も、雪の上ならお手の物。
限られた道しか歩くことができない夏山に比べて、圧倒的に自由で、冒険のしがいがあります。
冬ならではの景色を楽しむ
夏とは異なる繊細で荘厳な景色
白で覆い尽くされた世界は圧巻です。
凍てつく寒さと樹氷に囲まれた厳冬期、春の息吹を感じる残雪期など、同じ冬でもいろいろな表情があります。
雪は見ているだけでも美しく、どこまでも静寂が続きます。
雪が降れば居ても立っても居られない
必要な装備
冬山を始めようとすると、ピッケル、アイゼン、ビーコンなど数え切れない装備を新たに購入する必要があります。
しかし、それは難易度の高い山に行く場合のときに限ります。
お散歩レベルではスノーシューとストック、夏の登山で使う服と長靴があればバッチリです。ついでに温かいお湯の入った水筒と、リュック、サングラスがあれば完璧。
つい意気込んで色々買ってしまいますが、最低限必要なものから揃えていくのがいいでしょう。
スノーシュー(西洋かんじき)
長靴やスノーブーツだけで雪の上を歩くと、体がどんどん雪に埋まってしまいます。
雪の上でも浮力を有するスノーシューを履けば、雪の上を自由に移動できるようになります。
値段はピンきりで1万円~4万円程度までありますが、ハイキング程度でしたら1万円5000円程度のものを選んでおけば間違いはないでしょう。
日本のかんじきより西洋のかんじきの方が浮力があります。
歩くスキー
雪の上を自由に歩き回るためには、スノーシューか歩くスキーのどちらかが必ず必要になります。
歩くスキーは裏側にウロコが付いていて、雪の斜面を登ることも滑ることもできます。
より遠くに歩いていきたい場合は、スノーシューより機動力の高いスキーがおすすめです。
値段は専用のブーツ込みで5万円以上はかかります。なかなか売っている店がありません。
歩くスキーは色々種類があるので要注意。以下リンク下部に簡単に記してあります。
ストック
雪の中で転んでしまった場合、ストックがあれば簡単に立ち上がることができます。スキーの場合は推進力に、スノーシューの場合でも不慮の転倒を防ぎます。
登山用のストックをすでに持っている場合は、雪でも沈まないスノーバスケットを別で買うと安上がりです。
これから新しく購入するのであれば、グローブをしたままでも長さが調節できるものをおすすめします。
登山用のウェア一式
肌着は汗が乾きやすい化繊かウールのものを、着脱のしやすい防寒着の上に、登山用のレインウェアやスキーウェアを着れば十分です。
寒ければグローブやニット帽も。
角膜がやけどしてしまわないように、サングラスは必携です。
スノーシューの場合、防水の登山靴や長靴、スノーブーツが必要になります。
歩く場所を決める
どんなところを歩けばいいのか、ガイドがないとわかりにくいかと思います。
しかし冬のハイキングは夏と異なり、決まったハイキングコースはありません。
雪さえあればどこでも歩けます。
夏のハイキングコースを歩くのもよし、林道を歩くのもよし、気になる場所があればスノーシューを履いて探検に行きましょう。
まずは林道歩き
そうは言っても適当に歩くのは怖い、という方は林道をおすすめします。特に冬期車両通行止めになっている林道は、スノーハイキングにぴったりです。
適度な斜度と、絶対に道に迷わないという安心感があります。
夏場の林道は退屈かもしれませんが、冬は歩くだけで面白いのです。
湖が多い場所
湖や沼が多いエリアもおすすめです。冬場は凍っているため、大雪原を楽しめます。
池めぐりコースなど、夏の登山中に見かけることがあると思います。
そういったコースは冬場にスノーシューのガイドツアーなどが開催されているため、踏み跡もあり安心です。
あとは適当に歩いてみよう
スノーハイキングに慣れたら、後は適当に歩いてみましょう。行きたいところに気の向くままに歩くのは病みつきになります。
ナビゲーションはGPSアプリを使って
適当に歩くと言っても、道迷いは怖いです。
そこで、ナビゲーションはスマートフォンの地図アプリを使います。
紙の地図を読める人でも、冬場は視界が悪くなり道に迷ってしまう場合があるので、地図アプリを併用することをおすすめします。
おすすめの地図アプリは
スーパー地形
山と高原地図
YAMAP
です。事前に地図をダウンロードしておけば、電波がない場所でも自分の居場所がわかります。
冬はスマートフォンのバッテリーの消耗が早いので、スマートフォンを2つ持っていくか、予備のバッテリーを用意しましょう。
スノーハイキングに適した天気
冬場は、急に雪が降ったり、視界が悪くなることもあります。なるべく天気のいい日を狙ってハイキングに出かけましょう。
天気は良くても、前日に大量の積雪があった場合は雪が多すぎて歩くことができません。
おすすめは気温が高くなり雪が緩んだ次の日の、気温の低い晴れの日です。スノーシューの歯が締まった雪にうまく刺さり、気持ちの良いスピードで歩くことができます。
当日の天気だけではなく、前日までの雪の状況を見て、日時を決めることが大切です。
危険を察知する
冬山は夏山の登山道にはない危険があります。
雪崩や凍傷、遭難!?と必要以上に怖がることはありません。
標高の低い場所で散歩する程度でしたら、知識だけで回避できることもあります。
沢
スノーハイキングで最も注意しなければならないのが、沢です。
沢の上に雪がかぶさっていて見えない場合が多く、踏み抜いて沢に落ちてしまうこともあります。
水深が浅い沢でしたら足が濡れるだけですが、一度濡れてしまうと乾かず凍傷になってしまうこともあります。
また、深い沢に迷い込んでしまった場合、脱出するのは困難です。
どうしても沢を渡らなければならないときは、橋のある場所まで迂回するか、十分に渡れるほど雪が積もっているのか注意深く確認します。
ツリーホール、枝
常緑樹の周りには、雪が積もらずぽっかり穴が空いているものがあり、ツリーホールと呼びます。
あまり雪が積もってなさそうにみえても、何メートルも穴がある場合もあります。
巨大なツリーホールの中に入ってしまうと、身動きをとるのがむずかしく、逆さまに落ちたら体の向きを変えることができません。
歩いている際の地中の枝にも要注意です。細い枝でも雪で固まっていて、足を引っ掛けてしまうことがよくあります。
歩くスキーの場合は、スキーが引っかかって足を骨折する場合もあります。
ホワイトアウトによる道迷い
雪や霧などで視界がなくなってしまうことをホワイトアウトと呼びます。同行者の姿がわからなくなるほど真っ白になることも。
雪が沢山降っている場合は、自分が歩いてきた踏み跡がなくなってしまうこともありえます。
GPSアプリを携帯する、近くに車道や林道がある場所を歩くことで、リスクを回避できます。
雪崩
標高の低いハイキングの場合そこまで神経質になる必要はありませんが、渓谷沿いの遊歩道などは雪崩の巣になっていることがあります。
標高差が大きい地形には、近づかないのが吉です。
さまざまな楽しみ方
スノーハイキングは歩いているだけでも楽しいですが、他にもいろいろな楽しみ方があります。
一つ一つの奥が深く、突き詰めれば一生の趣味になるでしょう。
アニマルトラッキング
雪の上についた動物の足跡をたどっていくと、その動物がどこを歩いて、何を食べたか推測できます。
冬の山林は見通しがいいため、遠くにいる動物にも気が付きやすく、キツネやうさぎに遭遇することもあります。運がいいとカモシカとスキーで競争することもできます。
葉っぱが散っているので、木々の先端を望めば、鳥たちも。バードウォッチングも冬は適した季節です。
滑走を楽しむ
滑るのに丁度いい斜面は迷わず滑り降ります。
ゲレンデの雪と違って柔らかいので、転んでも痛くなく、むしろ転ぶのが楽しい。
転ばずにうまく滑れたときの達成感はたまりません。
樹木を愛でる
夏山ほど植物はありませんが、樹木を眺めるのには丁度いい季節です。
ブナの森や白樺の森に1人佇むと、それだけで心がやすらぎ、安心します。
春には新芽も生まれて、生命を感じさせます。
温かい飲み物を楽しむ
寒い日は、お茶菓子を持って雪の上でお茶会。これが正しい冬の楽しみ方です。
ナイトハイクをするときは、熱燗やホットワインを。
荷物に余裕があれば、チーズフォンデュも楽しいです。
水筒に熱々のお湯を入れて飲めば、温かさが体を巡ります。
雪の上を歩くのは、何よりも自由
スノーハイキングを始めるにあたって、
ガイドを雇わないと心配だったり、ちゃんとしたコースや装備が無いと不安かもしれません。
しかし、いったん始めてしまえば後は自由。
好きな場所に出かけて、好きな時間に休憩し、いつまでも雪を眺めていることもできます。
汗をかいたら帰ればいいし、登山道の通りに歩く必要も全くありません。
たとえ有名な山域でなくても、雪さえあればどこでも楽しむことができます。
他ではなかなか味わえない、「雪があることで生まれる自由」をぜひ味わってみませんか。