ウルトラライトバックパックはどれも似たような形で、どこに注目して選ぶべきなのかがよく分かりません。
フロントメッシュのサイズで選べばいいのか、形で選べばいいのか、生地で選べばいいのか、迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。
この記事の目的は、ULバックパックの弱点を知り、自分に合ったバックパックの選び方を学ぶことです。実際に半年のロングトレイルに使用したバックパックから、弱点を探っていきます。
使用したバックパック
故障箇所
ゴッサマーギアG4表面
ゴッサマーギアG4裏面
自作バックパック表面
自作バックパック裏面
約半年連続使用したバックパックを改めて点検したところ、問題があるのは大きく分けて以下の4つでした。
1、生地の劣化
2、パーツの劣化
3、強度不足
4、縫い目のほつれ
順に説明していきます。
1、生地の劣化
フロントメッシュは穴だらけ
メイン生地と底面の生地は充分
メインの生地はPCT、CDTともに70Dのリップストップナイロンを使用しました。若干の穴あきや、負荷のかかる部分の摩耗はありましたが、補修用のナイロンシールを携帯すれば問題ありません。
底面に使っていた生地は210Dの生地でしたが、穴や破れは一切無く、十分なスペックでした。詳しくは以下の記事に詳細を記してあります。
メッシュ生地が弱い
問題はフロントやサイドのメッシュポケットでした。中に入れていたガイドブックの角があたったり、バックパックを置く際に岩に当たったり、木の枝が引っかかったりして穴がすぐに空きます。
最初のうちは見栄えを気にして手縫いで直していましたが、数が多く面倒になったため補修用のダクトテープを貼り付けています。他のハイカーも同様で、メッシュポケットにはテープがたくさん貼ってありました。
バックパック背面の3Dメッシュも耐久性はあまりありません。腰の部分の摩耗がひどく、海外のULバックパックメーカーが背面にメッシュをあまり使わないのも頷けます。
生地にシワが生まれることで背中に違和感が生じる
背面やヒップベルト裏側に使用している3Dメッシュは耐久性があまりない
負荷のかかる部分は70Dシルナイロンではやや厳しい
2、パーツの劣化
ゴムはヘロヘロだが止水ファスナーは問題なし
ゴム
背面のマットを入れる部分に縫い込まれたゴムや、ボトルホルダーの入口に使われるゴムは揃って傷んでしまっています。ゴムとしての機能が失われるだけではなく、見た目もあまりよくありません。
コード
太めのコードは耐久性に問題はありませんでしたが、1.4ミリのダイニーマのコードは若干の痛みがありました。他の生地と頻繁に擦れる場所では、芯地が見えてしまうほど摩耗しています。
プラスチックパーツ
バックルが割れたり欠けたりということはありませんでした。過度な衝撃を与えなければ半年は余裕で持ちそうです。
パッド
バックパックのショルダーベルトやウエストベルトには衝撃を吸収するパッドが内臓されています。
ゴッサマーギアのG4も自作のバックパックも割と柔らかめのパッド(ポリウレタンフォーム)を使っていましたが、使っているうちどんどん薄くなり、ショルダーベルトの生地がねじれるようになりました。
背負い心地も悪くなるので、あまりに柔らかいパッドは避けたほうが良さそうです。
ゴムの熱処理が甘くほつれてしまっている
ダイニーマのガイラインの根本の破損
ゴムを使った箇所はすぐにくたくたになる
ショルダーパットが薄くなり、体に負担がかかる
3、強度不足
ショルダーベルト付け根のナイロンテープが取れる寸前
負荷が一点に集中する場所
ショルダーベルトのナイロンテープの付け根や、荷物を上からコンプレッションするためのベルトの付け根は、崩壊寸前の状態でした。
緩くなってきたと思ったら手縫いで補強をしていましたが、生地が硬く針も通りにくいため大変です。
負荷が一点に集中する場合には別の補強を施すか、負荷が集中しないように力を分散させてあるかは、見逃せないポイントです。
たくさん生地が集まる箇所
底面の角のように生地がたくさん集まる箇所は、生地が厚くなる分ミシンの縫いも甘くなります。こういった場所は負担もかかりやすい場所なので、縫い目から裂けてしまうことがあります。
ザックの裏側を見れば、別の補強(ギザギザの補強縫い)をしてあるかを確認することができます。
生地が必要以上に重なっているのも危険です。よくできたバックパックは、生地にかかる負荷をうまく分散させています。
バックパック上部をこの一本で支えるには無理がある
本体側のショルダーベルトの付け根
複数の生地が集まる角は、負荷がかかり補強が必要
4、縫い目のほつれ
いつの間にかほつれている
力がかかる箇所や、縫い目が何かに直接当たる部分は、ほつれることがあります。
ほつれたままでもしばらくは大丈夫ですが、放っておくと広がって故障が進んでしまうので、気づいたら縫いなおす必要があります。
負荷がかかる部分はほつれやすい
使わなかった機能
ピッケルホルダーはなくても良い
ピッケルホルダー
ピッケルを使う機会のないPCTではこの機能は使いませんでした。万が一ピッケルを使う場合でもバンジーコードを通すループがあれば代用できます。
バンジーコード
濡れたものやウィンドシェルなどを挟むためのバンジーコードですが、この機能も使いませんでした。
濡れたものは水分を含んでいるため重く、ゴムで支えることはできません。またレインウェアやジャケットを挟むのも、ザックに外付けだと紛失のリスクが増えて安心して歩けません。
バンジーコードをつけると見た目はいいですが、ものをしっかり挟みたいのであれば、ゴムではなく硬めのロープの方が良さそうです。
ホイッスル
チェストストラップ(胸の上のバックル)に笛がついていましたが、助けを呼ぶに は音が貧弱です。完全に気休めでした。
フロントポケット(あってもなくてもいい)
ウルトラライトバックパックのアイコンでもあるフロントポケットですが、最終的にあまり使わなくなりました。
たくさんものを入れると縦長の形状のため下のものが極めて取り出しにくく、中で物が動いてぶれたり、ものが混ざってしまいます。ゴミを入れたり、トイレ用品を入れたりするのには丁度良いのですが、あってもなくてもいい、という程度です。
また、濡れたものをメッシュポケットの中で乾かすのは不可能です。
フロントのバンジーコードはほぼ飾りだった
緊急時に使うとしたら音が小さすぎる
フロントポケットに濡れものを入れると荷物がブレる
必要だった機能
バックパックを体につける役割のショルダースタビライザー
ショルダースタビライザーストラップ
半年のロングトレイルを2回歩いて、どちらも後悔したのが、ショルダースタビライザーストラップのないバックパックを使ってしまったことです。バックパックを背中側に引き寄せる機能ですが、これがなかったため肩も腰も大変痛くなりました。
ウルトラライトバックパックはショルダーベルトを引っ張って、肩を挟みこむようにして背中上部で背負うものだと思い込んでいたため、不要と判断してしまいました。しかし私の場合、背中上部で背負えるほど荷物は軽くありませんでした。
背中とバックパックの間に隙間が空いている
背中荷重か、腰荷重か
荷物がよほど小さく軽くないと背中荷重は厳しい
背中荷重か腰荷重か
ULバックパックは背中全面で背負うため、下半身が自由になるのがメリットとはよく言いますが、私は基本的に腰荷重で歩いていました。理由は
1、平坦な道を歩くことが多く背筋が伸びているために、背中荷重をしようとすると肩に負担がかかる
2、アメリカのトレイルでは危ない道があまりなく、下半身を自由にさせるメリットがあまりない。腰荷重でも足捌きの邪魔にはならない。
3、五日間分の食料を積んだバックパックは重く、行動時間が長いため、肩が痺れてしまう。
もちろん、荷物が軽い状態の時や急いでいるときは背中で背負うこともありました。
期間が長いためどちらか一方に負荷を与え続けると故障してしまいます。
ロングトレイルでは体の痛みと相談しながら歩くことが大切なので、背中荷重、腰荷重両方を使えるようにしておくことが必要です。
そのため、どんなに細くてもヒップベルトはあったほうがいいと私は思います。
長い旅の相棒を選ぶ
ロングトレイルで1番長い時間を一緒に過ごすのがバックパックです。
使い勝手がよく、丈夫で、軽くて、背負っていると嬉しくなってしまうようなバックパックに出会うことは稀です。
ゆっくり時間をかけて、相棒を探すのも旅の楽しみの一つです。